私が野鳥の雑学に
たどり着いた理由
野鳥は面白いものです。知れば知るほど興味が湧く対象だと思います。しかし、そういう鳥の魅力を知る人はごく限られていて、世間に広く浸透してはいないでしょう。
私は、フリーの写真家として独立したばかりの頃には、私自身が面白いと感じる生態など、いわゆる図鑑的な知識を紹介することで野鳥の面白さを伝えようとしました。しかし、鳥に特別な関心のない一般向けの講演会などでは、そういう話が好評を得るのは難しいことでした。一方、鳥好きの人たちに対しては既知の話と感じられてしまい、特別関心を寄せてくれるものでもなかったように思います。
では、どうすれば多くの人に野鳥の魅力が伝わるだろうか…。
自分の興味の赴くままに鳥への知識を取り入れるのではなく、その魅力を世間に伝えるという目的意識を持ってその頃取り組んだのがより詳細な野鳥解説書や論文などを読み漁ることでした。
そのような試行錯誤の結果、たどり着いたのが"野鳥の雑学"だったのです。言い換えれば、日本人の常識的な話題と野鳥とを結びつけて野鳥の面白さを伝えること。これが私が言う"野鳥の雑学"です。知れば知るほど面白い、ちょっと楽しい、心に残る…。そんな鳥の話題を、適格な生態写真と共に、提供できたらと思っています。
ツバメチドリ(沖縄県)
雑学である所以
鳥を知ることは、基本的には形態や識別、生態といった自然科学の分野の探求だと思います。一般には鳥類学と言いますが、バードウォッチングなど趣味として鳥を楽しむ人にも動物学の一分野としての鳥類学の知識の有無がその楽しみの質にも量にも大きく影響します。
例えば、見た鳥が何という種類なのか識別するにも動物分類学の知識が必要です。ラテン語で表記される学名もある程度は知っていないと重要なことが理解できません。
また、鳥が何かしている場面を見たとしましょう。それが何のための行動でその鳥にとってどんな意味があるのか知らないままでは、鳥を知る楽しさの、ほんの入り口にたどり着いただけだと思います。鳥類生態学の範疇になりますが、鳥たちの行動の意味を知ることはとても重要です。いずれにせよ、鳥を楽しむための基礎知識はこのように系統立った自然科学という学問がその基盤にあります。
これに対して、鳥の楽しみを広げるのに有効だと私が考える"雑学"は、私たちの生活や価値観、日々の暮らしの中のちょっとした楽しみを生かす方法です。これなら誰でも関心を持ちやすいでしょうし、気軽に鳥に親しめると考えたのです。文化や歴史や宗教などもその題材となりますが、とにかく肩ひじ張らず何でもいいから面白そうな要素を使います。つまり、種々雑多な知識だから雑学なのです。
ヒシクイ(新潟県)
野鳥雑学の入り口は鳥名の語源由来
例えば、最も身近な野鳥スズメ。その鳥がなぜスズメと呼ばれるのか知っている人は多くないでしょう。また、春を告げる鳥として親しまれているウグイスは、なぜウグイスと呼ばれるのか。これも同様です。
じつはスズメもウグイスもそれぞれ鳴き声が和名の語源由来です。見たこともない、名前も知らない鳥の、貴重で珍しい生態をいきなり説明するよりも、多くの人に身近に感じられる鳥を題材にしてその魅力の世界へと一人でも多くの人をいざないたい…。これが私の活動の源泉です。
鳥の呼び名の語源由来は、昔の歴史や文化や価値観と密接に結びついています。知れば鳥を見る目が変わります。野鳥がぐんと身近になることでしょう。
私の野鳥雑学に触れて野鳥が身近になったと感じる人が一人でも増えれば、これほどうれしいことはありません。そのために、私は皆様に提供する鳥のおもしろ雑学のネタを、今日も探し続けています。時には古典文学作品から、また時には様々なジャンルの論文を読み込んで、その知識に磨きをかけていきます。私のもう一つの活動の柱である撮影活動の精進と共に、その努力を決して怠りません。
ちなみに、スズメとウグイスの和名の由来を具体的に知りたい方、まずは私の著書を図書館ででも是非読んでみてください。
ウグイス(北海道)